33)鬼がいない鬼瓦
川越の蔵作りの町並みには大きな鬼瓦が載っています。
一番端の瓦の、両側から葺かれたケラバ瓦(袖瓦)が一番上で合流しますが、その上に丸い鼻のような「又ギ巴」(またぎともえ)という瓦が載っています。
前回の棟の冠瓦(かんむりかわら)に丸い蓋をつけたようなものですね。
その奥にあるのが鬼のいない鬼瓦=カエズ瓦です。
棟に積んだ右側の熨斗瓦(のしがわら)と冠瓦の端を留めて、左の又ギ巴を上から抑えて、雨によって棟の瓦が傷まない様に守っています。
単に飾りの瓦のように思えますが、実はとても重要な瓦です。
棟に三段に積まれた熨斗瓦と冠瓦を押さえているのが良くわかります
ここから雨に侵食されると棟の部分が大きく損傷しますので、しっかりと守る役割を持っています。
更に、雨が差し込みやすい入り墨部分には、昔にはなかったコーキングが打ち込まれていますので、なおさら耐久性が高くなっています。
伝統的なお寺などに見られるさまざまな装飾的瓦がありますが、それらは単に飾りのためではなく、本来雨や風から屋根、建築を守るために工夫された一枚一枚の瓦が基本です。
すべての瓦に機能、役割がしっかりと与えられています。
デザイン的に和風であるとか、重いとか、すっきりモダンにデザインしたいということで少なくなってきましたが、これほどまでに洗練された機能と素材の美しさを持った屋根材は他にありません。
日本が世界に誇る伝統です