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2)新・あぜくらの家と神社仏閣建築

調布の家のクライアントの方は岐阜が生まれ故郷です。

 

岐阜=飛騨は木の国です。

 

豊富な木材資源に恵まれ、伝統的な木工芸、木造建築が今に伝えられ、高山も伝統的建築の町並みは国際的にも知られる観光地でもあります。

 

ご夫妻の本物を見極めるセンスもそうした環境が精神的基層から生まれたものと感じられます。

 

良い木の家は住む人の人柄やセンス、考え方、想いが生活を通じてそれとなく感じられることだと思います。

 

私たち設計監理、施工管理者は木の家の生活において、その想いを実現する歌舞伎や文楽の黒衣(くろご)のような役割です。

 

木の家づくりネットワークがご提案する木の家のなかで、家全体を厚板で包み込んだ「木のパオ」のような「新・あぜくらの家 」の造り方に共鳴して頂いたことも、心の中にある木の国の心象風景があるのかもしれません。

 

併せて、お手入れのし易い木の家のご要望も実現していかなくてはいけません。

 

さて、最初に新・あぜくらの家のご提案をした家を設計したのは1993年でした。

 

動物の里親をしている女性の家造りで、朽ちたときに大地に帰る家をつくりたいと言う言葉からイメージを広げて、日本の伝統的な穀倉や神社、仏閣などに見られる厚板のを壁の柱の間に落とし込んだ板倉造りの工法を、現代の生活、法規、住宅性能に併せて新たに開発したものです。

 

伝統的建造物の保存、修理に携わりながら、新しい国産材住宅の開発を手がけられた田中文男棟梁が提案された工法技術ををヒントに、家全体のつくり方に援用したものです。

 

その後、平屋、二階建て、三階建てにと展開して、今年になって新たに次世代省エネルギー基準を満たしつつ、構造性能を向上させつつ、オール無垢国産材の工法開発を行いご提案しています。

 

よく知られている伊勢神宮や多くの神社仏閣の壁の作り方に今でも見かけることがあります。

 

木の家散歩

これは三鷹市の野崎八幡神社の拝殿です。奥に本殿があります。

 

武蔵国府の府中と杉並大宮神社を結ぶ甲州裏往還道の人見街道の三鷹市の中央部に位置する神社で、近年建替えられました。

 

桧の柱にヒバの厚板が落とし込まれています。

 

四周を回廊が廻り、その下は石場建てという基礎石に直接柱を建てる方法で、通風性を確保しています。

 

基礎は下面全体にコンクリートを打ち込まれたベタ基礎方式です。

木の家散歩

軒の出が大きいため、雨にもさほど洗われずに、幅の広い無節=無地(節の無い)厚板がはめ込まれています。

 


木の家散歩

こちらは隣の神輿庫です。

 

少しこじんまりして、柱も厚板も小さくなりますが、造りは同じです。

木の家散歩

 

基礎と土台の間は通風用のスリットが開けられたネコ換気方式で、伝統的な建築を基礎コンクリートの上に作る場合に工夫されたもので、現在の基礎パッキン方式の前身です。

木の家散歩

因みに屋根は銅版加工の鬼瓦を載せていて、細かいところも良くつくられています。

 

金の破風飾りも荘厳で、中央部の丸い棒が飛び出したような部分は猪の目賭魚(いのめげぎょ)と呼ばれ、屋根を支える一番上の梁である棟木の小口を隠す飾りが装飾的に変化したと思われます。

 

猪の目とは心臓の形を模したといわれています。

 

このような神社の壁の構造は人が住むというより宗教建築であり、神輿を保存するものであったりしますのでそのままでは木に家になりませんが、そこに断熱性や耐震性を加えて、現代の木の家にも十分継承していけるものです。

 

壁、床、屋根に杉の厚板を使った木の家を、様々な住宅性能をバランスよく確保して、現代の生活とデザインに適合させた新しいあぜくら造りの家=新・あぜくらの家をリーズナブルなコストで実現するべく設計に精進です。

 

新・あぜくらの家の応援よろしくお願いします(´∀`)