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11)断熱材の隠れた性能

木の家づくりネットワークの無垢の木の厚板を床、壁、屋根に構造材、仕上げ材、断熱材として使って、木の家全体を木で包み込む作り方=新・あぜくらの家の住まい手の感想を伺うと、冬の暖かさをご評価いただきます。

 

厚さ30ミリの杉やサワラなどの柔らかく、断熱性の高い樹種を使うこともありますが、その快適性の秘密に木材、木の繊維が持つ蓄熱性があると思われます。

 

断熱材の性能はまさに断熱性=熱伝導率の低さを言うわけですが、室内音熱環境の快適性を高める性能には蓄熱性も関係するのではないかと考えています。

 

杉やサワラなどの針葉樹の断熱性はグラスウールの3分の1程度ですので、断熱材としては決して高くないにも関わらず、断熱材を使用していない新・あぜくらの家の冬の快適性はその蓄熱性に秘密があるのではと思うからです。

 

蓄熱性とは熱容量の大きさが大きいほど大きくなります。

 

熱容量は物の温度を1℃上げるために必要な熱量をあらわしており、物質の比熱×密度であらわすことができます。

 

その熱容量の大きさを持つ断熱材がセルロースファイバーであり、自然の木を粉砕してマット状に固めたものがウッドファイバー断熱材です。

 

このたび、初めて小田原の家で採用します。

木の家散歩

 

これが厚さ100ミリの屋根、床用ウッドファイバーで、3枚が一梱包になっています。

 

木材繊維がびっしりと詰まっています。

 

 

高性能グラスウールと同じ断熱性能(熱伝導率0.038W)でありながら、約5倍の熱容量を持っています。

 

熱容量が高いと断熱材そのものに熱を溜め込む力が大きいため、外部から断熱材に与えられた熱量が断熱材の中に滞留することで、断熱材の外に出にくいことになります。

 

よく言われるように、暖めにくく、冷めにくい特徴を持った断熱材と言うことができます。

 

お湯を沸かす鍋のときには熱容量が小さい材料のほうが効率的に沸かすことができますが、熱容量が少し大きい土鍋ですとなかなか沸きにくく、一度沸くと冷めにくいということになります。

 

断熱材は熱をまったく伝えないわけではなく、伝える量が少ないものですから、伝える熱が一度断熱材に滞留することで、断熱材全体で熱を溜め込んだ緩衝帯=熱量のダムの役割を持ちます。

 

断熱材が熱のダムになることで、溜め込んだ熱の分だけ、移動させないことになり、その後の断熱材の両側の環境の温度差が小さくなると、その分の熱量が断熱したい側に放出されないことが有利に働きます。

 

それは、断熱材の内側と外側で熱の移動が緩やかになることになります。

 

冬に室内の暖房熱や人体などからの発生熱が断熱材に蓄熱し、暖房を止めても断熱材の外側に熱を放出しにくく急激に温度が下がらず、熱を徐々に放出することで温度低下を緩やかにします。

 

その逆は、急激な熱量放出による室内温度の低下です。

 

夏は外部の太陽エネルギーを直接に伝えず、内部に蓄えながらゆっくりと内部に伝えることになり、かやぶき屋根のような遮熱性が期待できます。

 

ただし、長時間にわたって熱を受け取ると全体が蓄熱した状態になるため、冷め難くなることが考えられますので、屋根通気や遮熱シート、遮熱屋根材などの併用が望ましいと思われます。

 

少なくとも急激な温度上昇は防ぐことができます。

木の家散歩

 

この表は各種の断熱材の性能比較をしたものですが、比熱は木質繊維断熱材が2100J/kgKであるのに対して、同等断熱性能のグラスウールの約2倍、温度伝達率は木質繊維断熱材はグラスウールの2~5倍を示しています。

 

密度が木質繊維断熱材はグラスウールの2~3倍ですので、掛けるとやく4倍~5倍の熱容量になるわけです。

 

残念ですがこの比熱の性能の評価はいまだ正当に評価されていません。

 

新・あぜくらの家の温熱環境のよさはこうした木材の繊維の熱容量から持たされるものであり、それはまた防火性能にも現れています。

 

改めて木の持つ力に敬意を払いたいと思います。

 

木材繊維の断熱材の隠れた性能は、比熱だけではなく調湿性能もありますが、それは次回とします。