9)構造設計と計算
建築主が希望する生活を実現しつつ、地震に強く、美しい木組みを作るために構造設計をスケッチから始めましたが、それを検討しながら図面に起こしていきます。
特に、吹き抜けが木の家の中央にありますので、その吹き抜けを家の中心として気持ちの良い空間にすることと、構造的安定性を高めることがポイントです。
吹き抜けの一角の24センチ角の大黒通し柱を据えて、四方から幅12センチ、高さ33センチの梁が四方から刺さるように組まれます。
そうした木組みの構造設計図の中心的な図面を構造伏図、通称「伏図」(ふせず)と呼びます。
その伏図において、木組みの内容がほぼすべて記入されます。
以前は大工が墨壷と墨さし(墨壷の墨を加工する木材につける竹の筆のようなもの)で板に書いたもので、板図とも呼ばれている図面とほぼ同じ内容ですが、正確に書かれた伏図は板図の替わりに加工に使われます。
これは二階や屋根の伏図ですが、梁の大きさや柱と梁の交差部分=仕口(しぐち)の状態や接合方法も記入されます。
」
ここで重要なことは、「引き抜き対策」です。
阪神淡路大震災以来、地震時の倒壊状況から、家の構造がしっかりしていても家の形のまま倒れることが見られました。
家の構造強度が上がってきたことでグシャッと倒れるのではなく、柱が土台、基礎から抜けるようにバタンと倒れることが問題視され、その対策として引き抜き対策が講じられるようになりました。
この伏図をもとに構造設計家の構造計算に基き、1、2階の柱の下(柱脚)と上(柱頭)に生じる引き抜き力を確認して、その力以上の耐力をもつ接合部の設計を行い、図面に記入することで大工に情報を伝えます。
その計算の結果から得られた数値を表にしたものが次の表です。
表の右から三番目のマイナスで表示された数値が引き抜き力で、ニュートン表示ですので分かり難いですが、1階の角の柱などで大きいところで2トンから3トンの力で引き抜かれます。
こうした構造設計と構造計算を同時に進めながら、木組みの設計がいよいよ大詰めとなってきます。