6)木の割れ
インテリアに木組みが見える木の家の場合に、柱と柱の間に掛け渡された梁の「割れ」を心配される方がいます。
水平に天井を張れば隠れてしまう梁が現されていますと、その梁が割れていると構造的に大丈夫なのかといった不安があるのは当然かもしれません。
丸太の梁や大きな、太い梁になれば尚更のこと割れも大きくなり、二つに分かれて分解してしまうのではとまで思われる方もいます。
乾燥を充分にしても、古材の様に100年以上も前から使われ続けた木組みでも、現代の床暖やエアコンを密閉性の高い空間で使用したりする生活様式では、どうしても割れが発生することをゼロにすることは難しい状況です。
割れをよく見ると分かるのですが、一直線に鋸で切ったようには割れは入りません。
樹の幹が緩やかに回転するように成長することからか?は分かりませんが、木肌のうねりはまっすぐ一直線に出来ていないように、割れも緩やかなカーブを描いています。
そして、ある一定程度の長さになると割れがなくなり、その近くの別の場所から新しい割れが発生します。
まるで、ソフトクリームの渦のようです。
ただ、そこまでたくさんの割れが生じることはありませんが(=⌒▽⌒=)
つまり、木の繊維自体は、たとえ割れたとしても一繋がりの物として一体性を保っているのです。
それは、ロープが何本かの細いロープがねじれるように一体化して強い力にも耐えるのと似ているかもしれません。
ですから、構造的には粘り強く、しっかりと支えてくれます。
ただし、乾燥が充分でないままに使うと大きな割れになり、その大きさによっては問題になりますので、天然乾燥と人工乾燥を組み合わせるなどして木材の乾燥を緩やかに行うことは重要です。
近年、高温人工乾燥の柱や梁などの国産の杉材が流通しています。
特に、構造金物によって合理的に接合された軸組みに使われる木材の乾燥は、15%以下にすることを求めていることもあり、かなり強く人工乾燥を掛けていると思われます。
そうした木材の柱や梁の内部割れが問題となっています。
小口割れは柱などの木材の両端の小口から長手方向に割れが入ったものです。
上のスケッチの右側が、先ほどまでご説明した表面の割れで、自然乾燥によって生じやすい割れです。
左側が内部割れが起きた木材の小口の割れの状況です。
木材の表面には割れが見えませんので一見するととてもきれいで、乾燥も十分な木材に見えますが、この割れが内部に長く一直線に伸びています。
木材を二つに分断し易い割れで、構造的には問題ないとはいえない、グレーゾーンの木材です。
木材業界は木の割れが最大のクレームとして問題視してきましたし、住まい手側も木の割れを欠陥商品とばかりに指摘してきた経緯があります。
割れが見えることを避けるために、高温で表面を瞬間的に乾燥させて、乾燥収縮による表面割れを内部に閉じ込めたことになってしまったのかもしれません。
水を吸い上げて、葉から蒸発散して、二酸化炭素を固定化して成長した木をなるべく自然に使うときに、割れをまったくゼロにすると考えるのは、人間にとって見栄えの都合を優先しすぎているともいえます。
少し割れても気にならない使い方、設計、施工の仕方を工夫することや、構造的に大きめに、安全側に設計すること、そしてなるべく自然乾燥を組み合わせて割れの少ない木材を生産する工夫などが大切です。
金山杉の柱は、樹齢80年以上の太い丸太の木を使っているため、木目が緻密で、
丸太の中心と製材した柱や梁中心をずらすことが出来るため、割れが非常に少なく出来ます。
葉枯らし天然乾燥、寒伐り丸太とバイオマス中温人工乾燥で、穏やかに、自然に近い乾燥方式です。
木の家をつくるネットワークの力を結集して、木目も、節も、割れも自然の一部と言う気持ちで隠さず、オープンに現していくことで、美しい木の家を造れればと今後とも精進です。