9)木組みの含水率管理ーその2
木の家の様々な不具合の元となる生の木=グリーン材をなるべく乾燥した木=KD材にすることは、無垢の木の本来の良さを生かして国産材を利用し、普及させるためには避けて通れない基本的課題です。
一方でただ含水率を下げることのみを数値目的化すると、過乾燥の弊害も現れます。
水分と一緒に木の樹脂分も抜いてしまうと、木がミイラのようになり長い目で見たときに将来に禍根を残すことも考えられます。
そこで、木の家づくりネットワークでは杉の樹脂分をなるべく残す自然乾燥と中温乾燥の組み合わせにより乾燥させた無垢の木を使い、プレカットによらない匠大工の手加工の木組みを基本に木の家を手造りしています。
その木組みは匠大工の加工場で、乾燥の状況を確認しながら、木目を見てどのように見せるかを熟練の経験により吟味されます。
そして、現場で上棟工事後にその成果が披露されます。
木材の含水率を計測する含水率計で実際の乾燥の様子を確認します。
ここでは昨年12月に上棟した小田原の家の現場での含水率検査の内容をご紹介します。
栗の土台の含水率は25%弱です。
栗は広葉樹ですので乾燥が難しいですが、良好な数値です。
この含水率計の測定範囲は表面から3センチほどまでの部分ですので、中心部分は計測できません。
中心部分のほうが乾燥が進み難いため木材全体での含水率はもう少し上がりますが、それでも40~50%以下ですので問題ありません。
柱は15%まで乾燥されています。
土台同様に全体では25%ほどの状態ですので、とても良い乾燥状態です。
梁の数値は20~25%ほどで、これも問題ありません。
梁は柱よりも部材寸法が大きいため乾燥が難しいのですが、柱と変わりない状態です。
二階の屋根の下にある軒面梁の場合も梁と同様によく乾燥されています。
そして二階の天井に張られたあぜくら板は14%です。
この乾燥状態であれば、将来にわたって乾燥収縮により板と板の間に隙間が生じることもないでしょう。
冬場の乾燥期の天井屋根からの漏気による温熱環境の問題はないです。
このように乾燥に十分配慮した木組みであっても、若干の割れは避けることはできませんが、構造的には、余裕を持って構造計算していますので問題ありません。
それは、木材ももともと一本ずつの生きた植物ですから、工場生産のような均一なものではありませんので、それぞれ違った木の特質、個性を持っているからです。
一つとして同じ木目はない、固有な命の産物ですね。