13)地震に強く、長持ちする瓦屋根
設計当初に屋根は何がよいですかというご質問を時々いただきます。
赤い粘土を焼いて炭素でいぶした「いぶし銀黒和瓦 」がメンテナンス上宜しいのではとお返事しますが、最近のガルバニウム鋼板も耐久性が高いことをお話して、デザインとの関係で決めていく場合がほとんどです。
瓦といえば都市の中では少なくなってきました。
阪神淡路大震災の時には多くの瓦葺きの住宅が倒壊しましたが、それらの瓦葺き屋根は屋根下地の上に土を塗ってその上に瓦を載せただけの伝統的瓦葺きの工法でした。
その詳細を確認しないままに瓦葺きの家は地震に弱いと風評が広がり、瓦メーカーや瓦施工店が影響を受けました。
東日本大震災においても関東郊外地区の伝統的瓦屋根の住宅では瓦が落ちたりした被害が多く寄せられています。
東北の津波の被災地の情報が強いためあまり報道されてはいませんが。
現在の瓦は一枚ごとにステンレスの釘で瓦を留め、土を使わない現代的な工法によって施工されることが必要で、そのような工法と構造計算によって木組みがしっかりと作られる限りにおいて地震にも強い瓦の木の家が出来ます。
上に小さな穴が一つありますがそこにステンレスの釘を打ち込んで固定します。
軒先ということもあって日本の釘で留めます。
万十瓦の丸をとってシンプルにした物で、軒樋を設けないときなどに使いますが、軒先を一直線に施工する技能が必要で、手間が少しかかります。
また、屋根の一番上の「棟(むね)」の部分も重要です。
一番風雨が強い部分になりますので、「のし瓦」を3枚ほど重ねて雨水の侵入と風から守ります。
そのために瓦の接着剤代わりに土を使いますが、ワラを混ぜただけの土だと地震時には崩れることが多いため、南蛮漆喰という土に漆喰を混ぜた接着性の強い土で一体化させます。
鬼瓦も飾りのように思われますが、棟ののし瓦の端の部分を守る大切な役割を持っています。
実際に構造計算によって瓦屋根の場合でも長期優良住宅の基準である建築基準法の1、25倍から1.5倍以上の耐震のための耐力壁と高い床の剛性(床の固さの性能で地震の力を床にも伝えて地面に返すため)を確保できます。
もう一つの瓦屋根の設計上のポイントは、瓦がJIS規格サイズによって寸法が決められており、その寸法を守って屋根の形と大きさを決めないと現場施工時に問題が起きやすく、雨漏りなどに繋がりやすいことです。
板金やカラーベストなどのように瓦を半分に切ったり、曲げたり出来ないからです。
瓦の割り付けをきちんと行って、屋根の下地の木材部分の寸法を設計しておかないと現場で慌ただしくなり、施工トラブルが起きます。
上棟工事の大工との打ち合わせをきちんと行い、屋根瓦職人に上手くリレー出来るようにバトンタッチに気を使います。
日本の屋根=いぶし銀黒瓦を見直しましょう