4)懐徳館訪問 その1
木の家の設計を本格的に始めるにあたり
家のイメージを検討するために東京大学構内にある
壊徳館を施主さんの要望により見学することになりました。
私も始めてでしたが和風のイメージや造りを勉強したい
という施主さんの希望により、解説もかねて同行しました。
東京大学構内に壊徳館が何故あるのかは不思議でしたが
現在の本郷キャンパスは加賀前田藩の上屋敷があった
場所でした。
明治になってから前田家が南西隅の一角に和館と
西洋館を建て日本庭園も整備しました。
大正15年に両館共に大学に寄贈され
その時に「懐徳館」と命名され
迎賓館として使用されたそうです。
昭和20年の東京大空襲によって両館共に焼失しましたが
昭和26年に現在の和風の壊徳館が建築され
現在に至っています。
明治期の最初の和風建築がどのようなものであったかを
見ることができないのは残念でしたが
その時の建築を基本にしているのでは思いを巡らしました。
玄関のある北側正面です。
両側の大きな木にはさまれ、入母屋形式の大屋根に
玄関の切り妻の庇が中心軸をずらして配置されています。
外壁は漆喰で
真壁(しんかべ)造りによって外部に現された
柱や梁と漆喰の白が綺麗なコントラストを作っています。
加賀前田藩のものとあって武家書院作りの骨太な外観で
見方によっては寺の庫裏にも見える落ち着いた
佇まいです。
玄関の右にある出窓ですが、柱と梁でがっちりと
組まれています。
玄関の天井は大振りの格天井で
一回り太目の格子組が組まれて
天井板も市松に、交互に貼られています。
和みの木の家の設計に直接影響を与えたとは
思えませんが、結果として、玄関が軸をずらして
手前に飛び出す形は似ているともいえなくも無い
不思議な思いに駆られます。
当初の案では玄関は出ていなかったのですが
設計途中で、
玄関に次の間として簡単な畳の部屋を設けることなり
同じように手前に飛び出しました。
屋根は入母屋ではなく、シンプルな切妻ですが。
デジャブとまではいきませんが・・。