4)木を見せることが基本
無垢の木を柱や梁などの構造材に使い、室内に見えるように造る木の家の工法を「真壁工法」と呼びます。
昔は真壁工法が当たり前で、それしかなかったわけですが、関東大震災以降に急速に柱や梁が見えない「大壁工法」が増えて、現在ではほとんどの木の家は大壁工法になりました。
その理由は、火災によって失われた建物がほとんど木造であったことから、非木造化、不燃化という方向性の施策のもとに、外部は勿論ですが、内部においても木材を見せないようにしてきたことが原因の一つです。
そのために、現在の内部に良く使われる石膏ボードや外壁をモルタル塗りとしたり、サイディング張りとするなど、急速に木の家の建材化が進みました。
また、失われた住宅をなるべく早く、安くつくるためには、手間のかかる真壁工法よりも大壁工法の方が都合が良かったことが大きく作用しました。
生活の近代化、家電化の影響もあり、住宅の洋風化が進んだことも大壁工法をモダンなイメージとして取り込んで、「洋間」なる言葉も流行りました。
特に、戦後の高度成長期の住宅は大壁、ビニールクロス、塩ビシートの天井材、床フローリングはどこの家にも見られる標準仕様でした。
こうした家の造り方が、その後シックハウス症候群という住む人の健康を害する、病気にする家として大きな社会問題にまで発展しました。
接着剤に混入されたホルムアルデヒドやビニールクロスの可塑剤などの環境ホルモン、様々な科学物質が原因と考えられ、その後の化学物質過敏症につながっていきました。
シックハウス対策法によって問題はなくなったかに見えますが、むしろ深刻化した症状の化学物質過敏症、電磁波過敏症などに苦しむ方が社会的に省みられずに厳しい生活を送られている方がいます。
木の家づくりネットワークでは、1991年の発足当初から、準耐火建築物の仕様が求められる準防火地域内の三階建て以外は、すべて内部は真壁工法の木の家をご提案してきました。
和風に見られがちな真壁工法を、現代的な、モダンなインテリアのイメージにも適合させるデザインを提案し、漆喰や和紙などの自然素材との組み合わせで、新建材と言われる材料をなるべく使わない木の家です。
こうした、木の家の時計を少しだけ昔に戻して、少なくともインテリアに無垢の柱や梁、仕上げ板の木が見えて、現代の新しい技術、研究成果、生活様式を組み込んだ温故知新の木の家をそれぞれの立場で考えていくことが、日本の木の家を新たに発展させる基本になるのではないでしょうか。