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5)二つの構造計算

木の家づくりネットワーク/フィールドネット一級建築士事務所は、1999年より二階建て以下の木の家においても構造計算=許容応力度構造計算を行ってきました。

 

木の家散歩

 

木造三階建ては構造計算を行わなければ建築確認申請自体が受け付けられませんし、二階建て以下の標準的な木造専用住宅では現在でも求められていませんが、少しずつ構造安全性の確認が求められるようになってきました。

 

最近、長期優良住宅の補助制度が普及してきていますが、この適用を受ける場合は、性能表示住宅制度における耐震等級が2等級以上とすることが必要要件です。

 

具体的には、地震力と風圧力の対抗して構造的安定を保つための「耐力壁」(たいりょくかべ)の量が、建築基準法の規定の1.25倍以上必要であるなど、構造耐力のレベルを上げることが必要です。

 

その他、床=水平構面の耐力、固さが確保されていることや、木材と木材のジョイント部分=接合部の強度が確保されていること、構造上主要な部材=特に梁の強度の確保されていることを確認しなければなりません。

 

これらをすべて合理的に、一つの構造システムとして捉えて計算することが構造計算で、専門的には「許容応力度計算」(きょようおうりょくどけいさん)と呼びます。

 

建築基準法に即して手順がプログラムされた構造計算プログラムソフトとコンピューターによって計算されたものや、電卓などで手計算された構造計算で、柱や梁のすべての部材にかかる力とその力に耐えうる耐力を持った部材が対応関係を持っていることが確認されます。

 

その他に、地震時の建物がねじれる様に動くときの安全性の確認=偏心率、地震や風圧で揺れたときに二階や三階の横方向の動きがある数値以下になっているか=層間変形角、地盤耐力からの基礎の鉄筋の量や組み方などにわたって、細かく計算されます。

 

 

それに対して、もう一つの「簡易計算」と呼ばれる構造計算があります。

 

これは、一つの構造システム=木組みとして捉えるのではなく、性能表示住宅や長期優良住宅で確認することを求められている性能を、個別にピックアップして計算して確認する方法です。

 

耐力壁の計算や接合部の強度は許容応力度計算と大きく変わりませんが、水平構面=床の耐力の確認から偏心率の計算は、計算が手計算で行いやすいように簡略化されています。

 

また、気をつけないといけないのは、梁などの木組みを構成する重要な部材がどれだけの大きさがあれば耐えうるのかという部材の設計です。

 

簡易計算では、行政機関や外郭団体が用意した梁の「スパン表」と呼ばれる表を使って梁の大きさを決めます。

 

そのスパン表には杉などの国産材の材種に応じた数値が掲載されていません。

 

日本の木の家をつくるときにはその点に注意しなくてはなりません。

 

最近は、山形県などで発行している県産材の杉のスパン表などもありますが、積雪がある地域と層でない地域の違いなどがありますし、産地認証の義務化など併せて検討する必要も出てきそうです。

 

また、設計上、一般的ではない構造形式を採用したり、デザイン先行で複雑な構造であったりする場合は許容応力度計算が必要です。

 

構造計算の費用が少しかかりますが、すべての部材をチェックして、構造システムとして総合的に構造安全性を確認することはとても重要です。

 

いざというときの安心の保険料のつもりで、許容応力度計算をすることをお薦めします。