32)地震に強い屋根瓦工事・その2
屋根瓦工事もいよいよ一番上の棟(むね)の工事になります。
棟の部分の防水ルーフィングをカットして、下の通気層からの空気の抜け道をオープンにします。
大工が張った、養生のブルーシートも見えますね。
そのスリットの上から、瓦用の換気部品のリンピアという不思議な名前の部材を取り付けます。
両側を防水テープで貼り留めて、万が一雨が入った場合でもルーフィングの上に流れて、下には行かないようにします。
この換気部品の両側に空気が抜ける穴が開いていて、上に葺かれる瓦の下に抜けることになります。
瓦は一枚、一枚が微妙に隙間が開いているため、その隙間から最終的に屋根の断熱材の上の通気層の空気が抜けていきます。
夏場に屋根瓦が熱くなり、下の屋根を輻射熱で暖めますが、その熱を抜いて屋根自体が熱くならないようにします。
下の断熱材で、さらに快適な環境をつくります。
そして、瓦の下地の板=野地板(のじいた)が湿気で腐らないように、呼吸できる屋根になっています。
その上から熨斗瓦(のしがわら)を両側に積んで、中央に南蛮漆喰を入れて固めます。
その熨斗瓦をステンレスのバネのような金物で、動かないように一枚一枚留めていきます。
大きな地震で屋根が揺れたとしても、この南蛮漆喰とステンレスのバネによって熨斗瓦がずれないようにしています。
その上から二段目の熨斗瓦を葺いていきます。
だんだんと中心側に寄せる様に積まれていますね。
この段でも同様に、南蛮漆喰とステンレスのバネが取りつけられています。
そして、ステンレスのバネに銅線が髭のように付けられています。
これは、ホルマリ銅線といい、銅線をホルマリンにつけて表面処理をした物です。
近年の都市部の酸性雨による銅線の腐食に対抗するための処理です。
そして、三段目の熨斗瓦を積んで、一番上の瓦=冠瓦を乗せていきます。
この冠瓦の上に穴が開いていて、そこに銅線を通して上を結んで留め込んでいきます。
三段熨斗瓦の棟瓦が完成です。
一段目と下の桟瓦の間に見える南蛮漆喰がきれいに塗り込められていますね
きれいに葺き上がりました。
焼き物、いぶし物の渋さがたまりませんね
見る方向や光の当たり方、強弱で、いろいろな表情を見せてくれ、ずっと見ていても見飽きません。
向かって右端のケラバ瓦もきちんとホリマリ銅線で結ばれているのが分かります。
メンテネンスフリーの瓦屋根の完成で
す。
東日本大震災でも瓦屋根の被害がありましたが、そのほとんどが棟瓦の被害です。
下の木組みがきちんと耐震性が確保されておらず、大きく揺れたときには、土だけで積まれた棟はどうしても崩れやすいのは仕方ありません。
しかし、構造計算によって震度7でも大きく揺れない木組みを造り、一枚一枚の瓦をステンレスの釘で打ち留め、銅線やステンレスの金具を使った耐震仕様の瓦屋根は、地震に強い瓦屋根になります。
瓦屋根が地震に弱いのではありません。
これまでの風評を払拭してほしいと思います。
瓦葺き師は力と忍耐と器用な手先が必要です