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11)自由学園見学

本設計の初期段階での建築見学の最後は西武池袋線の
ひばりが丘から徒歩で15分ほどの自由学園です。

池袋の校舎が手狭になったため、広いキャンパスを求めて
西東京市の一角に広大な土地に造られました。

 


最初に見たのは初等部の校舎です。

木造平屋建て、瓦葺の切妻屋根のシンプルな形です。

入り口部分の大谷石の門柱が印象的です、


その後ろ側には初等部の食堂があります。
方形(ほうぎょう)というピラミッドのような形の屋根ですが
日本の寺院建築に多く見られます。

もう少し屋根の高さを高くすると阿弥陀堂のようです。

その両側は、明日館と同じくシンメトリーに回廊とサービススペースの
ゾーンが繋がって、同じように鳥が翼を広げたようなシルエットです。

先ほどの、入り口部分の切妻屋根と組み合わされ
全体で中央の広場を囲むように構成されています。

さらに、その奥には女子部の体操館があります。

その手前の広大なグランドは、以前は沢があったところで
そこに奥の部分の土を埋めて、グランドにしているそうです。

今でも、地下には水脈があり、建築にはあまり向かない土地です。

これも、水平的なデザインで、
手前にアール状に張り出している部分がアクセントになっています。

その奥が、女子部の食堂です。

これは一目で明日館を連想します。

内部も同じように天井を打ち上げています。

そうした広場では、生徒の作品が展示されていますが
キャンパスが広いこともあり、のびのびとした造形が魅力的でした。

女子部の教室の間は水路上の池が作られ
帝国ホテルのフロント部分を連想します。

このほかにたくさんの校舎、施設がありますが
高さをなるべく低く抑えられ、田園風景の中によく溶け込み
生徒自身の手によってきれいに管理されているところが
すがすがしさを感じさせます。

フランク・ロイド・ライトの明日館や帝国ホテル、旧山邑邸などでは
日本の伝統を自身の故郷アメリカ中西部のイメージと重ね、かつ
その時代性と強烈なオリジナリティーによって造形されていました。

それらの造形を引く継ぐことの難しさは
建築家個人の個性、タレントが固有のものであることを
意識せざるを得ません。

芸と言う造形を形式にして
日本の様々な「道」として受け継ぐ方法もあります。

また、西洋の建築の様式
日本の伝統的木造建築の寸法体系と工法のように
何らかのシステム、手法、技能にして受け継ぐ方法もあります。

しかし、現代の、世界の建築はそのような枠組みを
超えようとしているようです。

それは、個人の造形と言う世界を超えて、形になる以前の

過去から現在、そして未来へと繋がる時間の歴史的解釈
建築の場所から、自然や公共的空間へ広がる解釈
住む人、使う人の暮らし、生活に立脚した解釈

という、3つのフィールドの重なりの中から
美しく、居心地良いデザインのような気がします。

 

クライアントの子供さんの植木鉢の作品です。

手の感触が感じられる造形、ほのかな青い色がきれいです。

藍色にも似た好みの青がどのように木の家に出現するか。

横長の大きな水彩画。これをどこに飾るか。

そんなことを、当時はイメージはしていませんでしたが
不思議に繋がっていきました。

やはり、人の「心」があってこそ、建築、木の家ですね。