5)地盤調査の現実と闇
地盤調査にはスウェーデンサウンディングと表面波(レイリー波)探査の併用をお薦めしていることは以前の同じテーマの中でご説明しました。
それでもまだまだスウェーデンサウンディング調査のみで地盤耐力を分析している調査会社がほとんどです。
そのサウンディングの調査でも、手動型に替わって電気的制御でロッドを回転させる方法が主流になって来ました。
しかし、一方でその調査を実際に行う技術者は専門的な知識や研修をきちんと受けずににわか調査マンとして仕事をしている人が増えているようです。
現場では、ただ作業をするだけの役割で、いくつかの現場を効率よく回ることが求められます。
そんか調査マンに調査内容を聞いても、あまりまともな答えが返ってこない人が多く、結果としてデータをどのように検討分析するかは持ち帰ったあとの分析担当者が行うことに分業化と効率化が図られています。
それはまだ良いとしても、その分析結果から地盤調査結果を分析した後、必要以上に地盤改良や杭工事の必要性を報告書に記述されることが多いと聞きます。
住宅瑕疵担保責任保険が義務付けられてからそれが一層多く聞かれるそうです。
瑕疵保険を掛けないと引渡しができない状況で、報告書にそのことが記入されると保険会社の審査が通らないとばかりに、高額な地盤改良、杭工事が必要以上に求められます。
工務店は施主の全体の予算内で何とかしようとすると、自身のほか下請け工事会社にダンピングを迫らざるを得ず、結果として投資費用に見合わない家ができかねません。
調査会社と地盤改良会社、保険会社がグループ化して、関係性が強まるとそうしたことが半ばできレースのように行われかねません。
逆の意味で本当の改良工事が必要にもかかわらず、さじ加減で偽装することで、何年か経ってから問題が発生することもあります。
表面波探査はコンピューターソフトでデータが管理されるので調査、分析者の恣意性が排除されること、物理的サウンディング調査と違うデータ分析によりセカンドオピニオンとして相互補完的に分析できることがメリットです。
良いほうにも、悪いほうにも恣意的に解釈することが出来難いデータになります。
基本は、建築主が自らの責任で設計監理者に依頼し、専門技術者がスウェーデンサウンディングと表面波探査の複合方式で調査、分析を行い、木の家の設計内容を吟味したうえで基礎の設計を行い、地盤改良の必要性の有無を確定することを依頼することです。
その手間を省こうとすると、どこかで簡略化せざるを得ず、安全率を必要以上に求めた過剰設備の工事や地盤に偏った予算配分になる可能性があります。
正直で、まじめな仕事をする専門家が評価されなければ、優良な資産になる家や町づくりが実現しないですね。