7)柱の等級
真壁工法の木の家は構造として家を支える木がたくさん見えます。
柱や梁、屋根を支える小屋組みなど、様々な木がインテリアとして見えます。
その中でも柱は木の家の生活の中で一番身近に寄り添う存在です。
柱の傷は一昨年の・・・と歌われた童謡「背(せい)くらべ」のように、大黒柱に孫の背の高さの印をつけた住まい手もいました。
よく研がれた刃の鉋(かんな)で大工が綺麗に削り上げた柱の表面は、鈍い光を放ちながら少しずつ木の油が浮き出てくることにより、より一層光を放つように見えます。
丸太の年輪に沿うように製材した面は、年輪とほぼ平行に鋸(のこぎり)によって製材されるために、木目又は板目と呼ばれる炎のような木目になります。
竹の子が伸びていくように見えることから、縁起を担いでよい柱を調達しました。
また、年輪と直角方向に鋸で製材すると、柾目と呼ばれる、平行な年輪が連続する落ち着いた木目になります。
その年輪、木目の間隔が細かい方が美しく、強靭な柱となるため、なるべく木目の細かい柱を調達しました。
板目の綺麗な木は年輪の間隔も細かいため、柾目も細かな木目となります。
北国の冬が長い季節の中で耐えるように成長した杉や、急峻な山で緩やかに成長した木材は、そうした年輪が緻密で、美しい木目が現れます。
柱が見えると言うことは、その仕上がりがどのように見えるかを大工や設計者が考えることでもあります。
柱の四つの面のうち、壁などで隠れないで見える面の部分、見え掛りの部分は節や割れが出てこないように気を使って大工が加工します。
それは、木材の発注段階に遡って、どこに、どのような木を使うかということを考えて、材木商に発注することになります。
そこで、間取りや木組みが決まると、木材を一本一本拾い上げる木拾い書(きびろいしょ)を作成して材木商の発注します。
その木拾い書を作成するときに、図面に柱や梁の等級を記入して集計します。
自然の木に等級をつけるのはおこがましいのですが、マグロの競りのように、木材も少し前までは競りで買われていましたのでご勘弁ください。
下の図面が、柱の木拾い書を作るときに作成する木拾い図の一部です。
柱に色を着けて識別しています。
四面のうち、一面しか見えない柱で、その面に節を見せたくないときは「一無」とします。
「無」とは節が無いことを表しています。
「上小節」(じょうこぶし)は少し小さめの節がたまにあっても良いもの、「小節」(こぶし)は小さ目の節がまばらにあるもの、「特一等」は節があってもいいけれど、柱の角に丸太の丸い面があってはいけないものなど、様々な見え方による等級をつけています。
「無」の中でも、節のない面が、二面、三面、四面と増えていくにしたがって、「二無」(にむ)、「三無」(さんむ)、「四無」(よんむ)などと呼びます。
さらに、面の組み合わせで様々な呼び方と、面の使い方があり、細かく指定していくとたくさんの組み合わせになります。
そこまでやりますと、数奇屋建築になってしまいコストも高くなりがちですので、大まかに区別するにとどめますが、それでも混乱することがあります。
それを、木組みを加工する匠大工との打ち合わせや、検討を電話、ファックス、メールなどにより重ねていくと、お互いのイメージの中に一つの木組みがより一層浮かび上がってくるとともに、よりよき木の家に成長していきます。
設計者が木拾いをすることは少ないと思いますが、そうしたことがより木の家を確実なものにする大切なプロセスの一つです。
最近の集成材はどこを切っても同じ金太郎飴ですから、性能が均一化していますが、表情もみんな同じ顔をしているのっぺらぼうのようです。
上棟工事には木が見えても完成時には隠れてしまう大壁工法では、どこに何の木を使おうがお構いなしと言う気分になってきます。
何よりも、柱や梁などの木組みが見える木の家は、設計施工に手間もかかり、木も使いますが、気も使います。
しかし、出来上がって、住み込んだときの気持ちの良さは格別のものがあります。
そんなことで、今日も木の家精進です。