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16)木組みの家は自然乾燥と中温蒸気乾燥のコンビネーション

日本の国産材の振興のための木材の基本性能の標準化のためには、現在普及している高温セット乾燥による内部割れを極力少なくした乾燥が求められる現状はお話しました。

しかし、大量に流通材を送り出すことを求めず、顔の見える住まい手、建築主に対して直接的に、木が見える家、造り手の顔が見える木の家を送り出そうとする木材産地もあります。

その場合には、木肌が伐採したとき、命を落として新たなる木の家の木組みとして生まれ変わる時の、なるべくそのままの色や木目を伝えたいという山の人達の想いが伝わる乾燥方式を選びます。

それは、中温蒸気乾燥ですが、その前になるべく自然に乾燥させたいということで、地域の特色のある自然乾燥を試みています。

雪深い東北・山形金山町では、自然乾燥としての「葉枯らし(はがらし)乾燥」を基本にしています。

スギの頭の部分の枝を残したまま伐採し、木の生理作用が残るうちに、枝から水分が放出されることで自然乾燥を促す方式です。

伐採してから製材品になるまで時間がかかるため、その間の投資期間分の利息など管理経費などがかかりますが、木本来の生命力を生かした乾燥です。


無残に放置されているように思えますが、それが乾燥を待つ風景です。

また、冬の雪の中、凍裂を防ぐために水分を極力落とした時に木を伐る「寒伐り(かんぎり)」という方法も採用しています。

雪のクッション性と滑雪性を利用した搬出の合理性もあります。

静岡県の天竜スギの伝統的育成管理手法と「葉枯らし乾燥」の先進技術も、色と艶と硬さと木目がすべてにおいてバランスよく生かされているスギもあります。

埼玉の西川材の杉、ヒノキもバランスのよい木です。
秩父の木目の詰まった粘り強い杉としっかりした節もいい味を出しています。

日本各地の良材は、それを作り出す林業家、製材加工者、設計者、大工をはじめとした職人の力のネットワークにより、住まい手家族の幸せを組み上げていきます。

自然の力と人間の力で組み上げる木の家