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15)木が見える家は中温乾燥で

木造住宅に無垢の国産材を使うことで、地域林業。経済の振興と治水治山の整備を進めることは30年以上前から推進されてきました。

その成果が少しずつ軌道に乗り始めていく中で、一般流通木材に杉、桧のの柱を増やしていくために必要となったのが乾燥材の普及です。

流通市場で支持されるためには、木材の欠点とされる割れをなるべく少なくすることが求められました。

特に、杉の木の中心の赤身と周辺の白太の水分量が極端に違い、水分が均一に分布していないことから、杉の乾燥は割れと戦いといっていいほどに難しいものでした。

全国の林業地に設置された乾燥機の多くは、そうした割れが目立たない「高温セット乾燥」という方法がとられました。

乾燥庫のなかの温度を約110度という高温で乾燥させることで、割れも目立つ表面部分を最初に急速に乾燥させて、割れが入りにくくする方法です。

しかし、急速な高温乾燥の弊害があり、それが木材表面から例えていえば「木がミイラになる」様な、杉の赤白の綺麗な色が押しなべて黄色に近い、焦げたような色になったりしました。

それだけでなく、表面での割れを押さえられた反動が、柱や梁の小口から50センチ近くまで、内部に放射状の割れが発生することがみられました。

それが強度低下になったと考えられます。

こうした乾燥が普及する背景は、含水率20%という乾燥度の要求だけでなく、市場、施工者、消費者の木の割れに対する不安、欠陥品的な扱いが根底にありました。

また、なるべく早く乾燥して、効率的に出荷することも求めれらたこともあるのでは考えられます。

それが、表面の割れ=材面割れをなるべく少なくし、早く乾燥させる方法が採用され、結果として内部割れに繋がったともいえるのではないでしょうか。

流通品として使われる木材の多くはほとんどが、インテリアに柱や梁が見えない「大壁(おおかべ)」の造り方です。

出来てしまえば木がどのようになっているか、どのように変化していくかがわからない作り方では、多少色が焼けたような色でも見えないから構わないということもあったのではと推測します。

今後は、高温セット乾燥の細かい運転が見直され、蒸気乾燥とのコンビネーションなどによって、改善されることが求められます。

一方で、木がインテリアに見える「真壁(しんかべ)」の木の家は、変色や内部割れが起きにくい「中温蒸気乾燥」が適しています。

約80度の温度で、蒸気の中で乾燥させる方法です。


木の家づくりネットワークの木の家は、中温蒸気乾燥による杉を柱や梁に使用しています。

変色が起きにくく、自然の木の色を損なわないこと、内部割れが発生しにくいことがメリットですが、多少の表面割れが生じることや、乾燥期間がやや長く、乾燥コストもやや高いことがあります。

しかし、本来の木は枝を張って成長した証である節や木の乾燥による自然な割れがあって当たり前なことを理解して使うと、木の色や木目、風合い、呼吸性などを生かすことが出来ます。

自然に近い、木の繊維に沿った割れが生じても、その分大き目の余裕のある太さの木を使えば、構造強度的には問題ありません。

なるべく割れが生じないように乾燥させ、自然に入った割れを忌避しないことが、日本人の本来の木との付き合い方です。

木が見える、節が見える、割れが見える木の家