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14)安易な乾燥が木材強度を弱くする

木の家の木組みや仕上げ材に使う木材の乾燥が重要なことは前回説明しましたが、その乾燥方法によっては木材強度が低下するということがわかりました。

かねてより、木材加工販売業者、施工者、設計者の間で、乾燥方法によって発生する木材の小口から内部にかけて割れる「内部割れ」の強度低下に対する不安が囁かれていました。

それは、流通段階や現場段階で不良品的な扱いを受けやすい木材表面の割れ=材面割れを少なくする乾燥方法として広く普及している「高温セット乾燥」と呼ばれる乾燥方法によるものに見られました。

そこで、石川県林業試験所など全国の林業試験所と森林総合研究所が三年にわたって共同研究していた、内部割れの強度への影響と適切な乾燥方法についての内容を公開しました。

その成果は「安全・安心な乾燥木材の生産・利用マニュアル」という報告書で研究機関のHPよりダウンロードが可能となりました。

これはその報告書のパンフレットの一部です。

報告書の内容は強度の低下の内容と乾燥方法の改善への指針に大きく分けられます。

強度への影響は想定されたとおり、ヒノキを除くスギ、カラマツ、アカマツ、トドマツ、ヒバのほとんどの樹種に表れました。

国産材の主流を占めるスギでは、強度の中でも「せん断強度」という、木材の繊維と直角方向に裂くように働く力に低下が認められました。

せん断強度は木組みの接合部=ジョイント部分に働く力です。

接合部には、ボルトや釘などが使われますが、特にビスを大きくしたような形のラグスクリューやビスの強度に低下が見られました。

最近は接合部の金物をビスで留める方法や、筋交いをビスで留めるプレート金物が使用されることがほとんどですが、強度低下の影響が心配されますね。

このような内部割れがすべての流通木材におきているわけではありませんが、安易な乾燥工程によっておきた内部割れが生じた木材流通段階で管理することが難しい現状を考慮すると、木材乾燥段階での適正管理が重要になります。

この研究成果とマニュアルを実際の木材乾燥現場の技術者に講習することなどを通じて、本当に安全・安心な乾燥木材の普及が進めれれることを期待します。

次回は、内部割れの生じた乾燥木材の背景と対応についてです。

研究成果の活用があっての国産材振興