8)本物の木の家で長期優良住宅-1
長期優良住宅の技術基準に適合した木の家を造ることは、さほど難しいことではありません。
税制の優遇措置があることや、地域材を使うと国から最大120万円の助成が得られるインセンティブがあり、それを目玉にメーカーでは商品を用意していますし、デベロッパーや規模の大きい工務店では販売戦略に組み込んでいます。
その基準に適合しやすいようにパッケージのパターンを作っていますので、その中から選べば大筋は問題ないことになります。
しかし、自由に設計して、住まい手の生活のイメージを組み込み、デザインとしてもあるレベルの質を持った本物の木の家を設計する中で、長期優良住宅の基準以上の性能を満足することは少し工夫が必要です。
そもそも、長期優良住宅の技術基準はどんなものかを、調布の家の設計に即してご説明します。
少し専門的な言葉になりますが、法律で決まっていますのでご容赦ください。
1、劣化対策
分かりやすく言いますと長持ちするように作ることで、木の家づくりネットワークでは長年の成果により標準仕様です。
維持管理しながら、構造躯体が100年ほど持つこと。
100年持てば立派な民家です。
構造躯体とは、地盤、基礎、木組み、屋根などの骨格部分です。
地盤は表面波探査とサウンディングによる地盤調査データと分析による地盤改良です。
基礎は家の下全部が鉄筋コンクリートになるベタ基礎です。
基礎コンクリートの厚みはすべて15センチ、コンクリートの水セメント費は50%以下の中性化による劣化の進行が遅いコンクリートです。
木の家は木が命ですから、木が腐らないように、食害にあわないようにすることが一番ですね。
そこで、基礎と土台の間に栗のパッキンを敷いて、床下が全面的に換気できる「栗パッキン工法」です。
まだ、当時は珍しかった20年前から取り組んでいる工法です。
ただし、浴室と玄関は断熱性能を確保するために密閉化します。
柱を支える「土台」(どだい)は東北産の栗で、床を支える「大引」(おおびき)は金山杉の赤身です。
杉の赤身はシロアリも食べません。
柱や梁の木組みは金山杉、そのほかの一回り小さい部材や屋根や外壁の下地板はは杉です。
合板は一枚も使いません。
外壁と屋根は通気工法で、室内からの水蒸気を滞留させずに腐れから木を守ります。
外壁が左官壁ですが、性能が評価された通気防水防風シートで、シンプルな造り方にできました。
ここで、国産の杉を木組みに使うときに行わなければならないことで、検討の余地があるのが防腐、防蟻としての薬剤処理です。
栗パッキン工法と通気工法と漏水対策をきちんと行えば問題は無いと思われますが、基準どうりに行います。
外壁の地面から1メートルの部分を薬剤処理しなくてはならないのですが、認定薬剤は効果が5年ほどに限られている物がほとんどです。
そこで、無機系防蟻剤のホウ酸をあわせて使用することで、さらに長期的に性能を維持します。
2、維持管理、更新の容易性
分かりやすく言いますと、メンテナンスし易く作るということです。
家の中でそのまま見えて、手で触れる部分はメンテナンスしやすいですね。
ただ、天井裏や床下、設備の配管などはほとんど見えないのが普通ですので、メンテのための点検口を設けたり、基礎の下に埋め込まないようにするものです。
木の家づくりネットワークの木の家は、二階の天井は水平に張らずに屋根の下にすぐ張ったりしていますので、屋根裏はそのまま見えます。
調布の家では、小田原の家と同じで二階
の天井は屋根の杉のあぜくら板がそのまま見えますので、隠しているものがありません。
ですから、点検口は不要です。
さらに、一階の天井も天井をほとんど張りません。
民家のように二階の床を支える梁がそのまま見える現しです。
つまり、隠すところがない、木組みそのままがほとんど見える木の家です。
床下も40センチの高さがありますので、点検は容易です。
実は昔の民家は隠すところが無い、ディスクロージャー型の木の家でしたから、点検も容易で、大工の腕が全部見えて、腕の良し悪しも分かり、お金のかけ方まですべて分かっていたのですね。
今はと言いますと、木の家だけでなく、あれもこれも・・・・・o(;△;)o
浴室は腰までユニット化されたハーフユニットバスですので、配管のメンテも容易です。
本当は在来工法の浴室にしたかったのですが、基準をどう読み込んでも、ユニットバスにしかならないのです(=`(∞)´=)
さて、長くなりましたので、耐震性や省エネルギーなどは次回にご説明します。