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9)ライトの明日館見学ーその2

フランク・ロイド・ライトの明日館はシンメトリー(左右対称)な構成で
設計されています。

校庭を左右のウイングが包み込むように
鳳凰が舞い降りた瞬間のようにも見えますね。

これは展示されている模型ですが、一見単純な形で、
飽きが来てしまいそうにも思えます。

実際には1回見ても、もう一回見たくなるような
不思議な体験をします。

その感覚はどこから来るのかと不思議に思います。

その原因の一つは、空間の流動的変化にあります。

天井や床の高さや、壁の大きさ、形を変化させることで
異なるボリュームの空間が、移動するにつれて
心地よいリズムで現れてくるからではないでしょうか。

エントランスの細長く、天井の低い空間

中二階的な天井高さのホール

 

2階展示室の下の暖炉コーナー。

 

2階展示室からのほーるの見下げ。

微妙に天井の形が異なり、スリット窓のある教室

ホールの北側の2階にある食堂

ここは特デザイン密度が高い空間です。
食事をするのが楽しくなり、厳かな気持ちにもなれますね。

これ以外にも、自然の中を探検しているような
わくわくするような、それでいて心が和む空間が
内外共に繋がっています。

こうした、多様性と連続性のある空間構成以外にも
もう一つ、飽きの来ない、愛着が生まれる工夫があります。

それは、照明器具を建築と一体的に作りこんだ建築化照明と
窓、椅子やテーブルの統一されたデザインです。

 

見る方向によって別の照明のように見えるペンダント照明。

照明自体は天井に埋め込まれて見えませんが
光はフレームの間から広がっています。

柱を利用して造りこまれたエントランス照明

そして、窓も沢山のバリエーションがありますが
デザイン手法は統一されていますので
しつこく感じません。

 

まるで、人間の個性がのびのに育つようにと
願いをこめてデザインされているかのようです。

ライトは帝国ホテルの工事監理中の設計変更による
コストアップ問題からトラブルとなり
その職を解かれて帰国します。

その反面、クライアントとの信頼関係から
滞在中の自由学園の建設の場が
癒しの場となっていたようです。

住まい手にとって、木の家が心やすまる空間であって欲しい
心が和む、安らぎの場所であって欲しいという木の家づくりへの想いが
改めて確認できた見
学でした。

和みの木の家・ひろま吹き抜け

空間とデザインのバランスのお手本とでもいえる明日館ですが
日本の高い湿度に対して、耐久性も考慮しています。

これは、屋根の一番上の棟の部分です。

瓦を銅版で表現したような彫りの深い、陰影のある屋根の
デザインですが、四角い椅子のようなものがその間にあります。

これは、屋根裏の湿気を排出するための、屋根換気機能を
持っていると思われます。

屋根が大きくなることで、両端の壁だけでは換気にならないことから
工夫されたと思います。

まだまだ精進と感服した次第です。